映画 『めぐり逢わせのお弁当』

《ものがたり》
インド・ムンバイでは、お昼どきともなると、ダッバーワーラー(弁当配達人)がオフィス街で慌ただしくお弁当を配って歩く。その中のひとつ、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕を振るった4段重ねのお弁当が、なぜか、早期退職を控えた男やもめのサージャンの元に届けられた。神様の悪戯か、天の啓示か。偶然の誤配送がめぐり逢わせた女と男。イラは空っぽのお弁当箱に歓び、サージャンは手料理の味に驚きを覚える。だが夫の反応はいつもと同じ。不審に思ったイラは、翌日のお弁当に手紙を忍ばせる・・・。



めぐり逢わせのお弁当


アパートの窓から学校に向かうまだ幼い一人娘を見送りながら、慌ただしく料理を始める女性。
上の階に住む叔母に窓越しのアドバイスをもらいながら、4段重ねの独特なスタイルの弁当箱に料理をまとめたころ、窓の下にひとりの男が自転車でやって来る。
ダッバーワーラーと呼ばれるこの男の仕事は、家庭で作られた弁当を回収して仕事場に配達すること。
作品の冒頭で、その実にアナログながら正確無比なシステムが紹介されます。
多くの配達人たちによって集められた弁当はカゴにまとめられて通勤電車に積み込まれ、配達人たちも乗り込みます。
そしてどこか決められた駅で弁当は降ろされ、配達人たちによって再び自転車で運ばれて、最後は仕事場の各個人のデスクにひとつひとつそっと置かれます。

こうして運ばれたひとつのお弁当が、1/600万という確率で “誤配”。
誤配が見知らぬ男女に思わぬ出会いを作り出しました。
定年が間近で会社の早期退職制度に手を挙げた妻を亡くした男と、夫からの愛を失ってしまった子持ちの若い女性。
間違いに気づいた女性が完食に感謝の言葉を綴った手紙を弁当箱に入れたことから、ふたりは心を通わせ、やがてお互いがそれぞれ仄かなときめきを抱きます。
日を重ねるに連れて、これまで変化の乏しかった男の表情がだんだん柔和になってきて、女性にも少しだけ笑顔が戻ってきます。

見知らぬ男女が心を交わすストーリーというのはハリウッド映画にもありますが、結末はハリウッドでは作り出せなさそうな話。-むしろこの結末のほうが、ボクたちにはしっくりきますね。
自分でも同じようなことをするだろうと共感を覚えましたし、切なさも心に強く残ります。
素敵なストーリーを、制作者や出演者など全員がていねいに繊細に作り上げ、編み上げた作品だということが感じられました。

ミュージカルのように突然歌い出すこともなく、大勢で踊るシーンもない、ヨーロッパの映画のようにしっとりとしたインド映画。
ダッバーワーラーたちが今日も弁当箱を積み込んだ電車の中で手拍子を叩きながら歌うシーンがエンディング。
甚句のような仕事唄が心地よい余韻として残ります。



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Re: 焼酎学生さま

今年見た映画の中でも最上位に入るほどの好い作品でした。
心を通わすほどに孤独さを感じずにはいられないという様子は、なかなか目で見てわかるように映し出すことはむずかしいと思うのですが、そんなところがじんわりと伝わってくるところも、素晴らしかったのです。
そして、そんな映画がインドから意味出されたということもまた、驚きでした。

No title

インド映画に対する印象を新たにするような作品なのですね。
弁当配達のインド式システムも面白そうです。
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