映画 『SCUM/スカム』

《ものがたり》
“面倒は起こすなよ、スカム(人間のクズ)”………
1970年代イギリス。とある少年院に収監されたカーリンは、受刑者たちのダディ(ボス)一派のクズどもたちの不条理な暴力支配、そして彼らとグルになっている看守たちからの腐敗した権力支配に耐える日々を送っていくうちに、その閉ざされた世界で生き残る術を次第に身に付けていく。もはや更生施設とは名ばかりの冷酷極まる管理システムに怒りの鉄拳を撃つべく、カーリンは単身反抗を開始するのだが……。



映画 『SCUM/スカム』


もともとは1977年にイギリスのTVムービーとして制作された作品。
当時の少年院は人権無視の行為が横行し、更生施設とは名ばかりのものだったようです。
ドラマではそういった実態をしっかりと描き出したために当局の圧力がかかり、放映禁止になったのだそうです。
そこで、同じ監督、同じ脚本を持って、さらにはほぼ同じ出演者で劇場用映画として撮影されたのが本作品。

タイトルの「scum(スカム)」は、本来の灰汁(あく)や滓(かす)といった意味から、「人間のくず」を表す俗語になった単語です。
イギリスのとある少年院に他の施設から移送されてきたひとりの少年。
移送の理由は、看守を殴ったからとのこと。
はじめは少年たちの覇権争いなどの様子が描かれていますが、意外なことに暴力シーンは極力少なく抑えてあり、その演出によって少年たちが常に暴発寸前に緊張状態にあり殺伐とした状況の中で過ごしているのかをむしろ強く否応なく訴えています。
そして、やがて見えてくる、憤りすら覚える事実。
一体誰が本当の「scum(スカム)」なのか。

暴力的な支配や強制的な管理システムをこれほどリアルに描き出したことについては、TV版では当局からの圧力で放映禁止になり、映画版も結局はお蔵入りになるほどですから、問題提起をして、イギリス社会に訴えようとした作品としては、十二分によくできた作品だと思います。

全編にわたって背景に流れる音楽が一切なく、また中年の寮母がひとり出てくる以外は女性の姿も映らない映画で、とにかく見終わったあとには、やるせなさが重く残る作品です。
それ故に、「気がめいる陰鬱な映画」や「行き過ぎてしまった映画」、「発禁処分を喰らった経験のある映画」などのランクに入れられてしまうのは致し方のないところなのかもしれません。
ですが、この映画が本来どういう意図を持って作られたのかという点だけは外さずに上映されることを願わずにはいられません。
それは、本国イギリスのみならず、本国公開からフィルムの修復を経て35年経った今日初めて公開に至った日本においても同じこと。
改めて、映画は娯楽のためのものばかりではないということを気付かされた作品でした。



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Re: 焼酎学生さま

ボクも基本的には、映画は娯楽と思っています。
ただ、作品は監督なり製作者のなんらかの表現と思っていますので、ドキュメンタリーであったり何かを強くアピールするドラマというのも、事前情報を聞いて興味が持てれば見ようと思いますね。

何かの正義感に無性に駆られた状態で強く憤って映画館を出てくるのも、ボクにとって結果的には娯楽になると思っています。
この作品も、話題になっただけある一本でした。

No title

ボクが思うには、入場券を買って観る「映画」なるものは、笑い・怒り・悲しみなども交えた、娯楽作品が良いと思います。
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