モネの「ラ・ジャポネーズ」を見に行く

クロード・モネの絵画は、どうしてボクの心の中の誰も足を踏み入れることのない無垢な部分に、否応なく波風を立てようとするのでしょう。
ニューヨークの近代美術館(MoMA)に展示されている『睡蓮』という作品の前でボクは、30分近くも呆然と立ち尽くしていたことがあります。
涙を流すわけでもなければ、もちろん微笑んだりするようなこともなく、その時はただひたすら絵を眺めていました。
高さ2m×幅13mもある絵ですから、どこか一点を見つめていたわけではありませんし、だからといって今だにディテールまでもが忘れられないほど詳細を目で追っていたわけでもなく、ひとことで言うならば圧倒されて漠然と眺めていたのだろうと思います。
ボク自身が触れることをずっと遠慮し続けているボクの心の中の一番柔らかい部分が、否応なく刺激されていたのです。

その時から20年あまり、モネのまた別の作品 『ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)』 が1972年以来の大規模な修復を受けて日本にやってきたというので、東京・世田谷美術館まで見に行ってきました。

『ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展』

修復は一年という時間をかけて極めて科学的に行われたようです。
変色してしまったり、顔料の劣化などでひび割れてしまったりした部分に手を入れて、本来の発色を取り戻そうという作業です。
絵の具を針の先ほどの量だけ採取して、それらを何種類かの顕微鏡や紫外線などを使って成分を分析。
劣化や浮いてしまった部分を、今度は劣化しない代替の絵の具で同じ発色にすべく修復していくというもの。
作品が描かれた当時(1800年代後半)に目覚ましい発展が見られたという絵の具の開発の歴史なども交えながら、劣化の理由から修復作業に要する高度な技術までがわかりやすく説明されていて、その一角だけでも展覧会は充分な見応えがありました。


「ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)」


鮮やかな緋色の打ち掛けを着て舞うカミーユ・モネ。
腰から下の背中側には歌舞伎役者の大きな刺繍。
そしてその向こうの壁や畳敷きの床には、何枚もの和柄の水うちわ。
高さが3mほどもあるこの作品からは、平らなキャンパスの上に描かれたとは思えないほど、とても立体的で豊かな質感を持ったボリュームが感じられます。
ひとことに緋色と言っても、そこには異なる色の絵の具が緻密に配されていて、モデルが実際に浴びている光がていねいに再現されているのです。
このモデルでこういう構図の絵を描こうという衝動に駆られた心情と、描き出すことに真摯に向き合い、ただならぬ情熱を注ぎ込んだクロード・モネ。
ものいわぬ絵を前に、ボクはまたしても20分近く立ちつくしてしまいました。
ボクの中のどういう感情を狙ってこうも刺激してくるのか-
その理由は実はボク自身にも全くわからないのですが、この作品を見ることができて本当に良かったと思いました。

展覧会そのもののテーマは、開国直後に保護という名目で日本から持ち出されて散逸した浮世絵などのうち、アメリカのボストン美術館に集められた収蔵品を展示して、それらの作品が欧米の画家ばかりでなく世界の文化にまで与えた影響などをわかりやすく見せるということ。
そのテーマでの展示も充分に見応えはあったのですが、ボクにとってはやはりモネの作品のインパクトの方が強烈なものでした。

東京・世田谷美術館で、クロード・モネの 『ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)』 を見てきました。

ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展

世田谷美術館


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Re: 焼酎学生さま

不思議なのは、『睡蓮』のシリーズの作品でも、それほど響かないものもあること。
キャンバスがそれほど大きくない作品では、やはり圧倒されるようなことはないのかもしれません。

大塚国際美術館のことは、以前に焼酎学生さんからうかがって初めて知りました。
淡路島ですよね。今度、関西に行った時に行けたら足を伸ばしてみたいと思います。
複写陶板画の『睡蓮』だけでなく、今回陶板画として蘇った「芦屋のひまわり」も気になりますね。

モネといえば、フランス・マルモッタン美術館所蔵の『印象・日の出』という作品の描かれた日時が解明されたという話題も今日のニュースにありましたね。

クロード・モネに大塚美術館。
まだまだ追いかけ続けなければならなそうです。

追伸

もしもご興味がある場合は、Wikipediaで「大塚国際美術館」と検索が宜しいかと思います。

No title

モネの絵画はボクも好きです。なかでも「睡蓮」の連作は200点もあるそうです。
その「睡蓮」の有名な大作の複写陶板画が、大塚国際美術館で見られます。ボクは3度も観にゆきました。
ずっと以前に「僕の富士山日記」でも取り上げたことがあります。
■トリップアドバイザーという、世界最大の旅行口コミサイトが発表した、「行ってよかった美術館ランキング2011」(日本)のベスト3はつぎの通りである。
 1.大塚国際美術館 2.安曇野ちひろ美術館 3.三鷹の森ジブリ美術館
同社によれば、日本には合計5,614の美術館、博物館があるとのこと。■
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