映画 『トラフィック』

《ものがたり》
パリの自動車会社の設計技師であるユロ氏は、アムステルダムで開催されるモーターショーに、自慢のキャンピングカーを届ける任務を負う。広報の若いアメリカ人女性マリアとトラックの運転手と共に現地に向かうものの、パンク・渋滞・交通事故など、数々のトラブルが一行にふりかかる…。



ジャック・タチ映画祭

このブログで、むかしの映画について書くのは初めてですね。
行きつけの映画館で「ジャック・タチ映画祭」という特集が組まれており、その中の一本を見てきました。

ジャック・タチは、1950年代から70年代前半まで作品を発表したフランスの映画監督であり俳優。
ジャック・タチ自らが演じる “ユロ氏” というキャラクターは、『ぼくの伯父さん』などこれまでに製作してきた長編映画を通じて作り上げてきた人物です。
長身でレインコートを着て小さな帽子をかぶり、長いパイプをくわえた “ユロ氏”。
ドタバタ喜劇の中で大活躍をしているのですが、セリフは極めて少なく、その僅かなセリフもまともに耳で捉えられるような言葉になっていないものが多く、まるでサイレント映画のような印象です。
とはいえ、『トラフィック』(「Traffic」:交通・通行・行き来などの意)というタイトルの通り、クルマをめぐる話ですから自動車が行き交う騒音はむしろ意図的に作品中に挿入されており、そういった場面ではうるささすら感じる作品で、喧騒と静寂が絶妙に織り交ぜられているように感じました。

無口な “ユロ氏” ですが、決して暗くうちにこもっているというわけではありません。
明るく紳士然と振る舞っていますが、なぜかあれこれトラブルに巻き込まれてしまうというところは、かつてのサイレント映画と全く同じで、チャーリー・チャップリンやバスター・キートンの作品などで見慣れたドタバタぶり。
長い手脚を使っていろいろな表現を繰り出すジャック・タチは、ミュージックホールの舞台でパントマイムを演じて人気を得てきた人物なのだそうです。
そのためか、セリフが少ないだけでなく、顔がアップになるシーンもほとんどありません。
身体全体の動きや空間の中での動きから驚きや笑いを引き出します。

ストーリーの展開に直接関係のないちょっとしたシーンにも笑いのポイントがあります。
例えば、クルマを運転中のドライバー。
信号や渋滞などで停車を余儀なくされて動き出すのを待つ間、皆さんならば何をしていますか?
あくびをしていたり、無意識のうちに鼻の穴に指を突っ込んだりしていませんか?
交差点などにカメラを据えて、一般のドライバーたちなのではないでしょうか、人々があくびをする場面をつぎつぎ映しだしたり、つぎつぎとドライバーたちが鼻の穴に指を突っ込むというシーンでは、映画館の中にじわじわゆっくりとしたくすくす笑いが起きました。
また、モーターショーの会場では、見物人たちが知ったような顔でクルマのトランクをムダに開け閉めしたり、シートの生地をなでてみたり、という行為を、これまたつぎつぎと映し出す-
パントマイムの舞台芸人だったジャック・タチの人物観察の着眼点を垣間見たような気がしました。

独特の美意識や独自の視点を含んだエスプリに富んだ作品でした。
他の作品も観てみたくなりました。

ジャック・タチ映画祭




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Re: 焼酎学生さま

この「トラフィック」は、1971年の作品だそうです。
40年以上前の作品でも、充分に楽しめて温かい気持ちになれました。

デジタル技術で画面はきれいにされているそうですが、それ以外の編集は一切なく今でも十分に楽しめる作品というのは、素晴らしいものです。

『ぼくの伯父さん』や『プレイタイム』など、他の作品も観てみたくなりました。

No title

ジャック・タチ『ぼくの伯父さん』。なつかしいですねえ。ボクが20歳台のころに観て、暖かい印象が残っています。
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