映画 『THE ICEMAN 氷の処刑人』

《ものがたり》
1964年、リチャード・ククリンスキーは、デボラという女性と結婚し、子宝にも恵まれた。
ある夜、ククリンスキーは、勤め先の工場でトラブルに巻き込まれ、ロイ・デメオというギャングに拳銃を突きつけられるが、まったく動じない。その度胸を見込んだロイはククリンスキーを裏社会へと誘う。
妻子にいい生活をさせたいククリンスキーは、以来、ロイ専属のヒットマンとして血なまぐさい仕事を請け負うようになった。
1970年代半ば。ククリンスキーは、ニュージャージーの高級住宅街にマイホームを構えていた。妻を心から愛し、ふたりの娘を何よりも大切にしていた彼は、表向きは為替ディーラーと称している。よき夫であり、よき父親であるこの男が、まさか冷酷非情な殺し屋というもうひとつの顔を隠し持っているとは、誰にも想像できなかった。



映画「THE ICEMAN 氷の処刑人」


1960年代から80年代にかけて、100人とも250人とも言われる人数の命を奪った、実在の殺し屋の物語。
冷徹な仕事ぶりというわけではなく、遺体を冷凍化することによって死亡推定時刻を不確かにさせるというやり方から「The Iceman (アイスマン)」と呼ばれたのだそうです。
しかし、正確無比な仕事ぶりや、とにかくその冷たい眼差しなどからもアイスマンというイメージは形作られています。
そんな、血も通わなそうな男がひとりの女性を愛して結婚して家庭を築く-
果たして本業を隠し続けて愛してやまない家族を守り続けることはできるのか?。

物語は、時の流れに従って起きるエピソードを重ねる形で構成されていて、ククリンスキーがなぜ殺し屋になったのかなどといった全体を俯瞰できるような補足説明は極力抑えられています。
それ故に、家族への愛情を深める様子とその状態を支えるためにより深みにはまっていく仕事の世界との間で苦しむククリンスキーの姿がより身近に感じられるような演出になっています。
単発の雇われ仕事をひとつひとつこなす一匹狼から雇い主専属の殺し屋になり、やがてはその組織の利害関係に関する整理にかかわるようになり、その結果当然のごとく家族のもとにも危険が忍び寄ることになる。

仕事人と家庭人、人間とは思えないような冷酷さと家族を愛する人間らしさ、仮りそめの上に成り立つ日常と実は現実の非日常…、そういったことが表裏一体にある日々。
誰の中にも多少なりとも潜む残虐性と、人としての温かさのバランス。
ストイックに隠し果せている残忍さがふとした時に滲み出てしまう…。

いつしかククリンスキーの温かな部分に共感している自分に気づいたのですが、この作品の監督もそういったところに惹かれたのだろうと思います。
つまり、冷徹な殺し屋もひとりの人間で、彼の中にも温かい血が流れているということ。
殺し屋という仕事は極端ですが、ひとりの人間が仕事と家庭の両立に悩んで苦労する姿は、ボクたち一般人とも全く同じ。
引き返せない状況を冷静に見つめながら、現状を打開すべく策を弄していく姿がていねいに描き出されています。

アメリカのそのときどきにおける時代の流れや人種などの背景もあったのだろうと思いますが、そういったことのわからない現代の日本に生きるボクたちが見ても共感できる部分が多くあり、知らず知らずのうちにぐいぐいと引き込まれていた作品でした。





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Re: 焼酎学生さま

二面性、ですよね。
この作品では、その二面性は表裏一体ではなく、同じ位置に渾然一体としてあり、ふとした時にそれぞれが見え隠れすると伝えられたような気がしました。

ペットにも二面性ですか…。
我が家のワンコたちにも、確かにちょっと思い当たるフシがありますねぇ。

No title

ボクを含む回りの百人は、それぞれに二面性を持っていると思います。
可愛いペットも二面性を持っています。
動物すべての本性だろうと思います。
だから戦争が絶えないのでしょうか。
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