「アンドレアス・グルスキー展」を見に行く

アンドレアス・グルスキー展


昨日の晩は、六本木の国立新美術館まで「アンドレアス・グルスキー展」を見に行ってきました。
写真展というべきか、もはや絵画の展覧会というべきか…。

カメラを使って撮影した写真というものは、基本的にはその写真のどこかに焦点が定まっていて、それ以外の場所は多かれ少なかれピントが甘くなっているものです。
ヒトは写真を見る時、無意識のうちにその定まった焦点に注目することを促されて写真のテーマを知ります。

ヒトの眼も基本的にはカメラと同じくひとつのレンズがひとつのポイントを焦点に結像させるのですが、眼球を細かく動かすことによって見た場所全てにいったんは焦点が合って、それらを記憶することによって、ある意味で全てのポイントに焦点が合っている画像を脳内で造り上げています。
それはある意味で、写真ではなく絵画を描いているような作業と言えるのかもしれません。

東京証券取引所やベトナムの籐製品の工場、図書館に空港、そしてマドンナのコンサートからアメリカの99セントショップ、果ては北朝鮮の大規模マスゲームまで-
いろいろなシーンを俯瞰的なアングルから撮影し、それらをデジタル処理することによって画面の隅から隅までどこを見つめても焦点が合っているようにした作品群の展覧会が、この「アンドレアス・グルスキー展」でした。

写真一点一点を眺めていく写真展とは明らかに異なり、作品の前でボクたちは画面全体を眺めてみたり、ぐっと近寄って隅から隅までじっくり眺めたりしなければなりません。
まるで、ちょっと離れて作品全体を眺めつつ、近寄って筆致やペインティングナイフで盛ったり削ったりされた油絵の具の様子を見るような動作で、写真を見るというよりは絵画を見るような気分の展覧会です。
しかし、見ている対象はカメラで撮影した、いわゆる “実写”。
従ってリアルであり、率直な印象は、ボク自身が実際にその光景を目にしている、-特に横幅3m前後、天地2m前後の作品の前に立つとその没入感は相当なもので、まさにその現場に立って眺めているという気分になる、という印象です。
大きな作品ならではの圧倒的な力を感じました。

自宅のPCで「アンドレアス・グルスキー」を検索して出てくる彼の作品を、いつも見慣れた17インチモニターで見ても、迫力は全く感じられません。
むしろ画面の隅々まで焦点が合っているバンフォーカスの作品ゆえに、見るべきポイントが定まらずに却って平板な印象すらあります。

この展覧会は、写真家が撮りたいシーンを撮って見せているという写真展ではなく、写真家が写し出した作品に対してそれを見る者がどんな風に自由に楽しんで、そしてその中で今度は見る者が自らの中に別の新たな印象を創造していくという、新しい創作体験の場なのかもしれません。
実際に作品を目にしないと、その体験の素晴らしさはわからないものだと思います。
不思議な気分になれた展覧会でした。



ANDREAS GURSKY | アンドレアス・グルスキー展

東京展は、9月16日まで、東京・六本木の「国立新美術館」
大阪展は、来年2月1日から5月11日まで、大阪・中之島の「国立国際美術館」
作品の見どころは、こちら


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Re: yuusuke320さま

六本木駅は利用せず、乃木坂駅を使ったので、1,500円は「アンドレアス・グルスキー展」に…、というのは冗談ですが、ニュースサイトの下段の方に小さく掲載されていた「99セントショップ」の写真に「なんじゃこれ?」と思ったのがこの展覧会を見に行ったきっかけです。

1,500円の印象に残る使い方も、さまざまなものですね。

No title

 六本木までは行ったのですが1500円がスター・トレックに化けました。 残念!

Re: 焼酎学生さま

国立新美術館は、地下鉄千代田線の乃木坂駅に直結していますから、往復は比較的楽なはずと考えています。
そして、あの写真は、通常は午後6時で閉館のところ、夜8時まで開館している金曜日ならではのもの。
9月16日(月・祝)までの会期のうち、チャンスはあと3日というところでしょうか。

ただ、あの壁面は展示室の外ですから、別の展示の時でも変わりません。
いつの日か、狙ってみてください。

No title

「アンドレアス・グルスキー展」を見に行って、I.Z.さんの写真と同じ背景で撮影してみたいです。
が、もう小遣い赤字に陥っていて、行けそうにありません。
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