映画 『しわ』

かつて銀行に勤めていたエミリオは、認知症の症状が見られるようになり、養護老人施設へと預けられる。同室のミゲルは、お金にうるさく抜け目がない。食事の時のテーブルには、面会に来る孫のためにバターや紅茶を貯めている女性アントニアや、アルツハイマーの夫モデストの世話を焼く妻ドローレスらがいる。
 施設には様々な行動をとり、様々な思い出を持つ老人達が、日々の暮らしを送っている。そして重症の老人は2階の部屋へと入れられることがわかる。
 エミリオはある日、モデストと薬を間違えられたことで、自分もアルツハイマーであることに気づいてしまう。ショックで症状が進行したエミリオは2階へ送られる日も遠くない。そんなエミリオのことを思い、ついにミゲルはある行動に出るのだった...

映画 『しわ』 公式サイトより

映画 『しわ』 公式サイト


映画 『しわ』


スペインの漫画家パコ・ロカが描いた作品 『皺』(原題:Arrugas)を、スペイン人の監督、イグナシオ・フェレーラスがアニメーション化した長編作品です。

前評判を聞きつけたのか映画館にはこの作品の登場人物たちと同年代の方々が多く集まっていましたが、そういった世代の方々には“漫然と見るならば絶対にお薦めできない作品” であるということが作品を見終えての正直な感想。
物語の結末を含めて、あまりに身につまされる内容で、自分に投影してみるとあまりに重なる部分が多いと感じるであろう作品なのです。

翻って考えてみると、それは生きていく限り誰にでもやってくる「老い」や「終の棲家」といった課題に目を背けがち、あるいは考えることを放棄しているのではないかということ。
高齢化は、スペインに限らず全世界の少なくとも先進国に共通する重大な社会問題です。
日本も今や65歳以上の人口が総人口に対して21%を超えて、高齢化社会ではなく、“超高齢社会” に分類されるのだそうです。
そういう現実にもかかわらず、目を背けたり考えたりしようとせず、ただ漫然と放置しているのが多くの人々にとっての実情でしょう。

招かれざる老化現象として目に見える部分に表れ、いやだなぁと思いつつも根本的な除去作業などせずに結局は放置されるのが常という “しわ”。
この作品にそんなタイトルをつけた原作者には感服です。
その原作者もこのアニメの監督も、実は40歳代。
この作品の中では親を養護施設に送り込む立場の世代として扱われていますが、明日は我が身と感じている世代でもあります。

これを機に現実を見つめ直して考えてみようと思うきっかけを与えてくれる作品でした。
身につまされる物語といってしまうと身もふたもありませんが、そんな中にも少なくともこうしていけば悪くないというヒントが置かれていたりもします。

どんな事柄を考えてもそれらは必ず暗黒の方向に向かってゆっくり動いているだけなのだと全ての事象を悲観的に考えがちな昨今。
しっかりと見据えて、考えて、なにかを変えていくことによってなんらか解決策は出てくるのではないかと、作品を見終わってしばらく経った今、ちょっとそんな気がし始めています。





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Re: 焼酎学生さま

物語の結末を語ってしまうようなことはしたくないのですが、この非常に淡々とした物語の最後では、過去の思い出に耽ったりしない人と、目先のことでも前向きに「これをしたい!」という夢を持っている人たちだけに新たな展開が訪れます。

年齢に関係なく誰が見ても素晴らしい映画で、考えさせられる内容だと思いますが、毎日精力的に活動されていらっしゃる焼酎学生さんには、ちょっと退屈に感じられる作品なのだろうと思います。

No title

「しわ」を観たI.Z.さんの感想によれば、この作品は監督と同世代の人たちが観る映画のようですね。
80歳の僕は見たいと思いません。
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