高麗川へ 武蔵野うどん を食べに行く

日和田山から下山したあと、巾着田には戻らずに東に向かいました。

高麗神社 高麗神社


聖天院(しょうでんいん)の前を通り過ぎて、高麗神社(こまじんじゃ)までやってきました。
唐と新羅(しらぎ)の連合軍によって滅ぼされた高句麗(こうくり)から逃れてきた王族、高麗王若光(こまのこきし じゃっこう)をまつった神社で、社屋や佇まいこそ和風なものの、祭神は完全に日韓が融合していて違和感がありません。
この地に移住させられた高句麗の民族と元々この地にいた人々とが、お互いに手を携えてこの地を開発してきたのだろうということがうかがえました。

高麗神社 高麗神社


高麗神社のある高麗川沿いでは米作りもおこなわれていたのでしょうけれど、川自体が暴れ川であったわりには流域の平地は広くなく、高麗神社から数百mも離れるとすぐに高台に上がってしまいます。
高台の上は、いわゆる“武蔵野台地”なのでしょう。
限りなく広い平地になっています。
水利に乏しく、水はけの良さそうな大地の上は、水田づくりには向かないのでしょう。今は住宅地の間に狭山茶の畑が目立っていましたが、そのむかしは小麦や野菜などが多く作られていたのだろうということが容易に想像できます。

そんな地産の小麦を使った郷土料理に、武蔵野うどん があります。
3年間の夏に初めて出会って以来、機会があったら地元で食べてみたいと思っていたので、巾着田と合わせてうどん屋を訪問してみることも、今回の目的のひとつとなっていました。
(故に日和田山に登ったり、高麗神社まで歩いて時間をつぶしたりと…)

手打ちうどん はら 手打ちうどん はら


向かったお店は、JR八高線の沿って走る埼玉県道30号 飯能寄居(はんのうよりい)線から住宅街の中に入ったところにある「手打ちうどん はら」。
店頭はこぎれいにしてはいるものの幟旗などの目立たせるためのアピールはなにひとつなく、そこがむしろ好い印象です。
時刻は12時15分。さぞや混み合っていることだろうと縄のれんをくぐって中を覗いてみると、意外なことに客は壮年男性3人の一組だけ。
「入口」などの張り紙もなにもない引き戸を開けて入ると、おかみさんとおぼしき女性が「お好きなお席へどうぞー」と案内してくれました。

入口前の三和土に4人掛けのテーブル席が2台、その横に畳敷きの座敷があり4人掛けのテーブルが2台、そして三和土の奥にも4人掛けテーブル3台分の座敷がありました。
厨房の中は見えませんが、ご夫婦とその娘さんの3人で文字通り切り盛りしているのでしょう。
注文した品が出されてくるまでの約15分間、店内には3人組のおじさんたちの意外と浅薄な会話と、埼玉県内のFM放送だけが静かに聞こえてくるだけで、新しい来客もなく、実に静かで素朴な店内でした。
注文する時にも感じたのですが、その後に厨房から出てきたおかみさんや娘さんは、客に供したお茶の残量を気にすることなどもありません。
だからといって商売がイヤとかネクラとかいうわけではなく、表情は明るく何か声をかければキチンと応えてもくれます。
なんというか、商売っ気がないということなのでしょう。
そんな素朴な雰囲気が空気を維持してくれているのが、店内に漂う鴨汁の香りです。

はら うどんセット


「はら うどんセット」は、冷たく絞められた うどん に温かい鴨汁、付け合わせに野菜のかき揚げと鴨のつくね焼き串のセットで、990円でした。
提供されていきなりカメラを構えるのは失礼かなど、いつも逡巡があるのですが、それでもあまりにおいしそうなのでカメラを構えていると、ボクの分を作り終えてひといきつきに出てきたのでしょう、おやじさんがボクの脇を通りながらぼそっとひとこと。
「45度で撮るのが、うまそうに見えるってさ」

「45度?」
どうです? この写真、俯角45度、つまり45度くらいの角度見下ろした感じに見えませんか?
おいしそうに見えますか?

うどんは地産の小麦100%で、真っ白ではなく生成りの色合い。
太さに差がありますが、腰がものすごく強いので、たくさんほおばるには向いていません。
見た感じではわかりませんが、表面も粗いのか、つるつるとすすることもなかなかむずかしい麺です。
少量をつまんで温かい鴨汁に浸して食します。
鴨も埼玉県産、ネギやかき揚の野菜も埼玉県は得意なところでしょう。
地産の小麦100%以外、産地についてのアピールは全くありませんが、地産地消の一膳でした。

本来は鴨汁ではなく、かつおだしのつけ汁だったのだそうです。
また付け合わせもかき揚げなどぜいたくなものではなく、主に茹でた野菜などの“糧(かて)”と呼ばれる質素なものだったようです。

この“糧”という言葉が好いですね。
農作業の傍らで、腹持ちの良いものをさっと食べるというための うどん。
働くために食べる、そのために食べるのだから、口に入ってエネルギーになればいい。
あまり日常生活では使わない言葉ですが、活動の源という意味での食料を示す“糧”。
こんな言葉を使うことからも感じ取れる素朴さが、「45度」とつぶやいた50歳代半ばとおぼしきおやじさんが打った力強い腰の うどん からも感じられました。

また厨房から出てきたおやじさん、地産の小麦粉であることなどを教えてくれてから、またひとこと。
「うどん 打つのたいへんだから、幟とか出すのやめちゃったんだよ」
「え? でもホント、おいしかったですよ。腰が強くて、歯ごたえもあって…」
「あ~、ありがとうございます…」

帰りがけに、お愛想しながら娘さんに、もう一度「うどん ホントにおいしかった」と言ったら、満面の笑みで喜んでくれたのも印象的でした。

手打ちうどん はら リーフレット


自宅で帰りがけにもらってきた手のひらサイズのリーフレットを開いたところ、「45度」の意味がわかりました。
ていねいに作られているホームページの、“はら うどんセット”のページでも
わかりますよ。
真偽の程はわかりませんが、おやじさんの主調は理解できました。


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Re: 焼酎学生さま

確かに、湘南から高麗川まではちょっと距離がありますね。
でも、巾着田散策やJR八高線に乗る機会などがありましたら、その時はぜひ。

関東ではなかなか うどん のうまい場所というのがないようですが、甲信越まで含めると、富士吉田の 吉田うどん は有名ですね。
彼の地で ほうとう は食べたことがあるのですが、吉田うどん はまだ未体験。
何かの機会に行った時には、挑戦してみたいと思っています。

食べて見たいな

うどん大好き人間の僕ですし、美味しいと聞けば訪ねてゆくのですが、「手打ちうどん はら」はちょっと遠すぎますな。
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