「…がりの女」

御大の記事にあった「孀婦岩」。
“そうふいわ”というその読み方も知らなければ、どこにある岩なのかも知りませんでした。
ですから当然、その“孀婦”という言葉も知らなかったわけで…。
で、記事を読み終わって、ふと10年以上前に知り合いの方々にメルマガみたいな体裁でお送りしたメールの文章を思い出しました。
今日は、その文章を再掲。

-*-*-*-


     朝の通勤電車も、都心に真っすぐ向かう路線でなければ吊革を
     持ちながら少しは余裕をもって新聞を読むことだってできる。
     隣の吊革のおじさんは、器用に縦長に折りこんだ新聞を読んで
     いる。
     厚手のジャンパーにノーネクタイのおじさんは、朝から官能文学。
     隣の私は、それじゃあ覗き込み様もないと、裏に来ているページ
     に何気なく目をやる。

     電車の中で隣合わせになった人の読んでいるものというのは、
     なんだか気になるもので、ついつい目が行ってしまう。
     乗り出してしまいそうになるほど見てしまうのは、やはり雑誌で、
     特に情報誌。
     新しいお店、新しいクルマ、新しい情報機器。写真を眺めてから
     その写真に添えられたコラムやキャプションを読んでしまうのだ
     けれど、時々せっかくいいところまで読んだのにページをめくら
     れてしまうことがある。
     そんな時は、思わず「あ、まだ読んでない!」と言いそうになる。
     コラムのオチが気になったり、中途半端に写真だけ見てしまって
     「え!? 今の何、今の何?」と後を引いてしまったりすると、もう
     これはちょっと中毒症状にでもなったような感じである。

     さて、一番最初に出てきた隣の吊革で官能小説を読むおじさんの
     新聞。私の見た裏面にさせられているページは、どうやらテレクラ
     の3行広告で埋められたページのようだった。
     そして私の目にふととまってしまった一文。
     それは、改行した後の2行目から唐突にはじまるひとことだった。
     「がりの女/…」
     もちろんこの「…」には金銭や時間的な情報などが続いているのだが、
     この最初の太字で書かれた「がりの女」という部分がとにかく私の
     頭の中に充満してしまったのである。

     「…がりの女」?
     縦折りにされて向こう側を向いているはずの、この「…」部分には
     一体どういう言葉があるのだろう。
     ふとそう思ったら、いっぺんに頭の中がいっぱいになってしまった。
     「“寂し”がりの女」、「“悲し”がりの女」。両方とも本当は「の女」では
     なくて、「な女」でなければ、文法的にはいけないはずである。
     でもテレクラで誰かを求めているならば、寂しがりの女でも悲しがり
     の女でも雰囲気はわかる。「“なに”がりの女」なんだろう。
     皆さんはどう考えますか?

     この甘ったれた世の中で結構いけそうなのは、「“強”がりの女」。
     弱さをちょっと見せることで母性本能をくすぐるタイプなのかも知れない。
     「“くやし”がりの女」はS系。「もぉ、くやしいったらありゃしない!」と
     がんばる人。一方で、「“痛”がりの女」はM系。
     「“した”がりの女」とか「“やりた”がりの女」なんていうのも考えられる。
     「“甘えた”がりの女」なんて、けっこう、めろめろになる男、多そう。
     …まさか、「“がり”の女」はそのまんまで、実は鮨好き?
     冗談はさておき、このくらいまで考え込んでしまうと、もう答えを
     知りたくてしかたがなくなる。いったい「“なに”がりの女」なんだぁ!?
     痩せ細った「“がりがり”の女」まで考えた時だった。
     おじさんがページをくるりとめくって、その一瞬に、わずかに右側に
     隠れた一行を読むことができた。
     …『昼下がりの女』。

     なるほど、いい雰囲気かもしれない。
     携帯電話でのメールや情報収集で時間の有効利用を計るのもいいけれど、
     こんな風に頭を使うこともまだまだ電車の中にはあるものなんだ。
     そう思った朝のひとときだった。
     まあ、携帯電話もマナーを守らなくてはいけないけれど、他人の覗き見も
     マナーとしてはあまりいいこととはいえないから、気をつけましょう。

-*-*-*-


思い出したわりには、「孀婦」にまつわる言葉、なかったですね。


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Re: 焼酎学生さま

今回の記事は2001年1月27日に送信したメルマガです。
11年前ですが、この時代は朝の電車の中はまだケータイではなく新聞や雑誌でした。
いつの間にケータイになり、スマホになってしまったんでしょうね。
最近テレビを見ていると、結局ネットに乗り遅れてしまったのを必死になって食い下がっている“あがき”のようなものが感じられる瞬間があります。
テレビ局に大きな代理店、今の時代はもはや最新の情報を提供してナンボのものっていう世の中ではないですよね。
そんな中でも生きていかなければならないわけで、確かにたいへんだと思います。

Re: サンシルさま

ごぶさたです。
文才に溢れているなんて、おこがましいです。

言葉は、ボクだって別に何か詳しいわけでもなんでもないんですよ。
ただ、あれこれ考えてみたり、想像してみたりするのが楽しいのと、まあ確かに、言葉遊びなんかも好きですね。
でも、オチははじめから決めてあるわけではないんですよ。
書いているうちに、あ~こうしようか、っていうだけなんです。
毎回、意外と苦労しています。
また来てくださいな。

Re: yuusuke320さま

短時間でこんなに艶っぽいお話をまとめるなんて、すごいです。
やっぱり、アルファベットを使う人々は、HのあとにIなんですね?

“人様の為”って、「“イ”+“為”」で「偽」。
限りなく黒に近い灰色ですね。

Re: kyさま

身の回りにはおっちゃんばっかりだったのに、ちょっと艶っぽい話、でした。
いや、純粋には艶っぽい話でもなんでもなくて、見えない文頭を推測するというだけの話なんですけどね。

「ふむふむ」っていうのは、納得を表す間投詞(感動詞)ですね。
ということは、「ふむふむ」に続けて、相手のいうことをちょっとだけ言い換えて返してあげればいいわけです。
「ふむふむ、○○ってことね」って。
そういう風にしていけば、会話が続きますよ~。

世の中は変わる

電車内での新聞・雑誌風景が、昔と比べたら激減しました。
それに代わって登場したのは、ケータイに始まるデジタル機器です。
各種メディア業界も大変でしょうね。

No title

久々にお邪魔します~

メルマガ再掲・・じっくり拝読。
I.Z.さんって文才に溢れているね~
オチもあって楽しい!
私も一緒になって・・がりの女、考えましたが、
お答えとなった言葉が一番綺麗かも。座布団1枚。

言葉ね・・
常識にも乏しく、ニュース用語にも弱い。
昔からある綺麗な言葉たちに通ずるわけでもなく、
現代語にはなおのこと、おいてきぼりの感あり。
ますます語彙の乏しさを感じるこのごろ。

一語から始まるおしゃべりもまた楽しです。

yuusuke320さんて凄いですね~その知性とエロティシズム、どうぞ素敵な女性といっぱい恋愛してくださいませ!!

こんばんわ。

 妄想が膨らみ、イメージが暴発寸前の(孀婦の)ようなky嬢へ。


     『ピンクチラシ』   by yuuji

   愛、売ります。新鮮熟れ頃、生ものですからお早めに
   恋、売ります。チョッピリの下心を満たす掘り出し物
   春、売ります。迫力バツグン、未使用高性能感動品!!

 怪しげなポスティングチラシに弾かれ、トキメキと冷やかしの電話を入れた。
「アイいくらですか?」
「コイもございますが・・・」
「え? アイとコイはどう違うんですか?」
「漢字が違うでしょう」
「感じ? フィーリングの違いはわかるんけど、内容は?」
「フィーリングじゃなくて、読み書きの漢字です」
「だから、具体的に何が違うんですか?」
「アルファベットでもHの次はI。漢字の愛には心という文字が真ん中にあり、恋には心が下についています。すなわち、ハートの問題です」
「なるほど、愛には真心、恋には下心というわけですね」
「そうです。お客様はどちらのコースをお選びですか?」
「で、いくら?」
「定価はありませんのでお客様が御自由にお値段を付けて下さい」
「じゃ、1円でもいいのですか?」
「はい、頭金1円のアクトクローンもございます」
「アクトクローン?」
「いえいえ、ア・クまでも納ト・クしてもらった上での契約でしてー」
「春、売りますって、売春ですか?」
「いえいえ、当店は法律を犯すような違法行為は行っておりません」
「やっぱり、デート嬢斡旋なんだー」
「そう解釈なさる方もいらっしゃいますが・・・」
「未使用ってバージン?」
「えぇ、保証付き間違い無く、お客様にとっては初めての初物です」
「経験有り。しかし、バージンって可笑しいじゃん」
「そんな事ありませんょ。バージンにこだわるお客様こそ、おかしいんじゃございませんか? もし、本物。どうやって見分けるんですか?」
「と、言われても・・・ 確かにー」
「当店は看板に偽りはありません。人様の為になるがモットーのお店です。人を騙すような事は決していたしません」
  つづく言葉が見当たらなかった。

思わず…生つばゴックン(下品~)、、何…何?と、のめり込むように次から次へと文字を追い、あらぬこと?想像し…心ときめかせた結果、、ヒヒヒ昼下りの女??だったんですね~(笑)あ~~気になって気になって、どんどん先を深読みしちまったぜぇ~ちょっとエロいぜぇ~勝手に“情事”を感じてしまったよ~ン(爆)
何だか、チラッと見えたり、見そうで見えないのを想像したりのチラリズム?エロティシズム?って心ワクワク(爆)
どうかしてるぜ!!(笑)
それにしても最近ますます漢字が読めません、、モチロン意味も(泣)メールの返信は「フムフム」「ほぅ」「へい」「ほい」しか書かない自分…大丈夫でしょうか!?
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