映画『HIT SO HARD』

HIT SO HARDアメリカのロックバンド HOLE の元ドラマー、パティ・シュメルの半生を、自ら撮りためていた映像を織り交ぜて追ったドキュメンタリー映画です。

サラリーマンのボクにとって、ミュージシャンなどいわゆるアーティスト(芸術家)たちの生活というのは、ある意味で理想です。
ルーティンワークのない型にはまらない日々、ムリやムダとわかっている業務は存在しない職業、嫌なら嫌と言える自由な生活。
しかしその裏側には、自分の感性と技術だけで高い評価を受け続けて食いつないでいかなければならないという厳しい現実があって、その奈落に落ちないように常にぴりぴりしているという状況があることもなんとなく知っていて、そこが自分からは踏み込めないところだと思っています。

一般社会常識を持って自己を律するよりも、自らの繊細な感性を尊重し欲求に甘くなりがちな人々と、少なくともボクは、アーティストたちを十把一絡げにそんな印象のある人々と思っているところがあります。

アルコール依存、薬物依存、同性愛。
女性ロックドラマーの中でも高い評価を得ていたパティ・シュメルでさえ、これらの障害に苦しみ、たびたび問題を起こしたりしているということを、この映画では彼女自身の肉声も交えてていねいに追っています。
そしてやがてやってくるバンドから離れざるを得なくなる事態に追い込まれるまでの顛末も明らかにしていきます。
才能と技量で生きる世界において、おそらくその理由は彼女にとって全く腑に落ちないものだったろうと思います。
サラリーマンの社会の言葉で言うならば「パワハラ」による「リストラ」。

自分自身の弱さ故に翻弄されていたような日々でしたが、ダメになるとそのさらに奥にある芯の強さで立ち直ってくる彼女。
最後のパートでは今現在、音楽とは異なる世界で成功を収めていることが紹介され、また若い子供たちにドラムを教えることを通じて、彼女が活躍していた時代のことを知らない若い人たちが彼女を目標にして動き始めているということが描かれており、それがこのドキュメンタリーを見る者に安心と期待を抱かせます。

ボクはあいにく、ロックバンド HOLE も、そのリーダーであるコートニー・ラブも、ほとんど知りませんでした。そればかりか、コートニー・ラブの夫であり、ロックバンド NIRVANA (ニルヴァーナ)を率いていたカート・コバーンのことも全く知りませんでした。
従って、この映画の中で初めて公開されたというカート&コートニー作の未発表曲「Stinking of You」が聴けても、正直なところ、大きな感動はありませんでした。

しかし、パティ・シュメルをアーティストではなくひとりの女性として考えた時に、自ら招いてしまったものも含めて何度も直面した危機に対して真っ向から闘いを挑んで克服していく彼女の姿は、決して華やかな世界の中だけに限った話ではなく、何かに行き詰まりを感じている全ての人たちにも何らかのヒントやきっかけとなるのではないかと思いました。
生きようと望めば選択肢はあるのだということを。


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Re: kyさま

お父さま、若年性アルツハイマーということなのですか?
何年か前に、渡辺謙氏が映画かドラマで演じたのを見て、詳しく知りました。
事実であるならば、ボクにはkyさんにかけてあげるべき言葉が思いつきません。
今、言葉を失っています。
映画はたとえ事実を伝えるドキュメンタリーであっても、それはどうしても“他人事”ですが、知り合いの方が苦しんでいるという事態には、いたたまれません。
だからといってなにかできるようなわけでもありませんが、どうかまずはkyさんが気をしっかり持って対応していただきたいと思います。

この映画、少しは参考になるかも知れません。
泣きたくなったら泣けばいいじゃないですか。
ストレスを軽減させる効果があるそうです。
ただ、泣き続けているわけにもいかないと思います。
泣き続ける自分に酔いはじめるかもしれないですし、泣くことを第一義に考えるようになると他の肝心なことに取り組めなくなりますしね。

近くではないけれど、それなりの距離にボクや御大はいます。
しんどくなったらまたいつも通り、コメントをください。

ハイ、おはようございます(笑)夜中?朝??
え~…大事なゴールデンウィークの始まりに、年はまだそこまで老いてない父がアルツハイマーにかかっているようで…イキナリ私を認識できなくなってました…勘弁してくれ~(>_<)
映画と酒ざんまいの予定が見事に打ち砕かれショック!!何がどうしたとゆうのか、、この現実を受け入れるのに…たっぷり半日かかりましたッ(短ッ!爆)
記憶って何?簡単になくすもの?脳の海馬の部分がやられるって相当痛いものですね…(ため息)
I.Z.さんお勧めの映画、、凄い…このドキュメンタリー強烈じゃないですか?解説読ませていただいて、なんだか直視できる自信がないですワ(汗)でもみたい!!
いつもたくさんの素敵な画像に癒されます。
ありがとうございます。
何だかそれぞれに受け入れなければならない現実があるのですが泣けてきますね、、人間て悲しすぎ…です…。

Re: yuusuke320さま

「スタア誕生」のリメイクですって? 嗚呼!

カート・コバーンって、そういうタイプのスターだったんでしたっけ?
「HIT SO HARD」ではコートニー・ラブとひとり息子の3人で、素敵な家庭を築いているというイメージだったのですが…。
まあ、その姿とショットガンによる自殺というのも全くかみ合わないのですが…。

Re: テラゲン合格!さま

人生はいろいろあって、つまづくことだってありますよね。
その時はキツくキビしいとは思いますが、そういう経験が人に厚みを与えて、他の人に気遣えるようにしてくれるのだと思います。
つまづいたっていい、一生懸命ならば。

トンチンカン?蛇足情報。

 クリント・イーストウッド監督、ビヨンセ主演でリメイク版「スタア誕生」が制作進行中だそうです。
 モデルはカート・コバーン? らしい情報がありますが、現在進行形の彼女のロック他活動はまったくもって未知でした。

生きるか・・・

僕は、何度か、
貴重な自分自身の命を
傷つけたことがあります。
ちょっとしたことで、
死んでしまいたい、消えてしまいたい、
と思うことが多かったですが、
今は、なるだけ前向きに、
考えるようにしています。
人生、いろいろあるけど、
つまづいたって、
いいんじゃないでしょうか?
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