石田 千 著 『踏切趣味』

「踏切趣味」

しばらく前に、代々木にあるお気に入りの古本屋で衝動買いした一冊。
もちろん、『踏切趣味』というタイトルに惹かれてしまったわけで…。

東京や神奈川から、遠くは山形県の踏切に出かけていって、その踏切の佇まいや街の雰囲気を眺めながら書かれたエッセイ集です。
合計で25ヶ所の踏切が取り上げられ、そこにひとつずつの俳句が添えられています。

著者の石田 千(いしだせん)という人のひととなりなど、知識は全くなく手に取ったので、読み始めた時点ではこの人は男性なのだと無意識に思っていました。
なにしろ、“踏切を見に行くことが趣味”なわけですからね。
ところが、読み進めるうちにやんわりと、「あ、この著者は女性なんだ」と気づいていきます。
そもそもひらがなの多い文体や、踏切の規模を定量的に表す時に「大また○○歩」などと書いているので、初めから女性っぽさには事欠いていないのですが…。
それでも、ほとんど読み終わるまで、ボクの頭の中には“活動的なおばあさん”というイメージしかありませんでした。

さる書評に、「美しい日本語」と書かれていましたが、そうではないような気がします。
豊かな語彙で、ていねいに言葉を綴っているのだと思いました。
そんな文章が連なっていたので、ご年配の方と思ってしまったわけです。

ところが、奥付に添えられた略歴をみて、驚きました。-ボクより若い女性だったのです。
しかし、その理由もすぐにわかりました。
16年間にわたって嵐山光三郎氏の助手をされていたのだ、と。
なるほど。言葉選びが念入りなわけです。

底の浅い書籍紹介サイトなどには「鉄道ファン必読」などと書かれていますが、鉄道が走る風景や沿線、それらの街の文化に興味を持たない鉄道ファンには向いていないと思います。
むしろ、鉄道やクルマにこだわったりするのは男性の趣味と思っている方々に薦めたい一冊です。
都会の中でも、意外と時間はゆっくりと流れているんだな、と気づかされました。
本当は、警報機がカンカン鳴って、目の前を電車が轟音を立てながら行き交っているというのに、この人の文章は、とても静かに暖かく、ゆっくりとしています。

遅読のボクですが、これはすっと読めました。
でも、早く読み終わった分、もう一回、今度はじっくり読んでみようと思わせる作品でもありました。

…そういえば、勤務先が引っ越してから、踏切渡ることなくなったなぁ。

湊線の踏切
ひたちなか海浜鉄道湊線 平磯-磯崎間にて (2008年9月27日)
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Re: 勤務先

> 吉田さま
ようこそいらっしゃいました。

誤解を与えてしまったようですね。
ボクの勤務先は東京都内で引っ越しました。
大田区にあった時は、毎朝改札前の踏切を渡って会社に向かっていましたが、品川区に引っ越した今は、踏切を利用しないだけでなく、近所に踏切すらない環境になってしまったのです。

湊線には昨年の9月に乗ったのが初めてでしたが、ときどき常磐自動車道の水戸I.C.から茂木方面に行くことがありますので、そういった機会にまた乗りに行きたいと思っています。
ケハ601は、むかしから気に入っている車輌でしたし。

またご訪問ください。
私もまた湊線に乗りに行きますので。

Re: ブログでも

> kamezoさん
男性っぽい文章を書く女性と、中性っぽい文章を書く男性が、基本的に好きですね。
媚びない柔らかな文章がいいと思います。
自分では、なかなかそんな文章は書けませんけど…。

この写真の踏切、気に入っています。
一時間に数本しか往来がない、農道の入口みたいな踏切なのに、立派な警報機と遮断機がしっかり守っている様子が、なんともいいなと思いましたので、撮ってみました。

勤務先

 湊線沿線でしたか。
 また遊びに来ていただければ。
 女性鉄道ファン(と言いきっていいかわかりませんが)の視点は、やはり少し違いますね。
 知り合いにも、ポイントの変わる音なんかに興味を持っている方が。
(吉田)

ブログでも

あれ?男の人だったのか??
と、後で気付くこと、ありますよね。
言葉を文字する作業って、むずかしいですよね。

ちなみにワタクシは、30代後半の男子です。(笑)

その踏切の写真、いい感じですね!
好きです♪
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