映画 『旅人は夢を奏でる』

《ものがたり》
今宵も感動に震える聴衆から、拍手喝采を浴びるコンサートピアニスト、ティモ(サムリ・エデルマン)。深夜にマンションへ帰ると、ドアの前に怪しげな男が眠り込んでいた。目を覚ました男は、「ティモじゃないか」と親しげに話しかける。男の自己申告が正しければ、彼はティモが3歳の時に別れた父親、レオ(ヴェサ・マッティ・ロイリ)だった。
35年も音信不通、ティモの母親が死んだ時も現れなかったのに、いったい何しに来たのか──ティモは当然の疑問をぶつけるが、レオは言葉を濁し、明日ウルフランドに一緒に行ってほしいと頼む。爆睡したレオのカバンをこっそり探ると、明らかに偽造のパスポートが入っていた。



旅人は夢を奏でる

3歳の時に突然いなくなった父親が35年後に突然現れるというだけでもどうにも面倒くさくて厄介な話なのですが、目の前に現れたその父親を名乗る男がなんとも胡散臭く、しかもそんな男が自分の生活にずかずか入り込んでくるなどそれはもうとても迷惑なこと。
その上で「いっしょに来てほしい」とのさらなる強引な要望にも、自らの考えで抑えこむことができずに応じざるを得ないのは、結局、自分自身もきちんとした生活ができていないから。

自分は父とは違うと思いながら生きてきて、今や音楽家として名声も得てると思っているものの、実は自分のことしか考えられずにいることに愛想を尽かした妻は子を連れて故郷に帰ってしまっているティモ。
そんな彼が、身勝手に振る舞うように見えながらもなぜかいろいろな人たちから愛されている父と共に旅をするうちに、全く違う人間と思っていた父と似ていると思い始め、やがては打ち解け合うまでになっていく様子が、ていねいに描き出されています。

父親は息子に直接語ることはないのですが、息子は父親の様子を見ながら理解していき、やがて失ってみて初めて大切だということがあることも知るに至る。
田舎のホテルのラウンジで行きずりの女たちに聴かせるためにシャンソンの名曲『枯葉』を親父と息子が即興のセッションで歌うシーン。
曲の盛り上がりと気持ちの盛り上がりが同調して、父と子の心の距離がぐっと近づいた様子が実際に目に見えるよう描き出されていて、なんとも言い表せないほど印象的でした。
とても静かで穏やかな空気感の夏のフィンランドを満喫しながら、とても優しい気分になれた作品でした。



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